小児皮膚科
当院の目指す小児皮膚科について
皮膚のトラブルを最小限にするため、予防にも力を入れています。
対象となる主な疾患
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、繰り返す湿疹と皮膚の乾燥症状を特徴とする皮膚病です。患者さんの多くは以前に気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のいずれかにかかったことがあるか、または家族でこれらの病気にかかった人がいるなどのアトピー素因をもっています。アトピー性皮膚炎は、生まれつき乾燥しやすい肌質で、ほこりなどが皮膚につくと簡単にかゆみを生じてしまう遺伝的な要因や、精神的・肉体的ストレスなどが発症や悪化に関与しています。治療は問診内容や採血結果により関連が疑われた悪化因子の除去に努め、日常的に保湿剤を用いてスキンケアを行い、皮膚の炎症やかゆみに対してはステロイド・タクロリムス外用薬を中心に使用しながら、光線による治療やかゆみ止め(抗アレルギー剤)などの内服薬による治療も選択することが可能です。定期的な通院・治療が必要となりますが、皮膚の状態にあわせた適切な治療を継続することにより、しっかりとしたバリア機能を有する皮膚を維持できると考えています。特にお子様の場合は、皮膚からアレルギー症状が出現し、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎へと症状がうつり変わっていく場合があります。そのようなアレルギー症状のうつり変わりを予防するためにも、乳児期からのスキンケアが重要になります。
じんましん
虫刺されのような発疹(突然赤く盛り上がる)が出たりひいたりを繰り返す皮膚病です。通常は数時間以内に消失し、多くの場合は痒みを伴います。疲労、ストレス、風邪などが誘因となります。じんましんの特殊型に、皮膚の腫れをきたす血管性浮腫があります。この場合は消失までに数日間かかる場合が多く、通常痒みはありません。一般的にアレルギーが原因でじんましんが出てくると思われがちですが、実際にそのような場合は10%以下です。問診で関連が疑われそうなものがあれば採血を行う場合もあります。じんましんの大部分は体の微妙なバランスの崩れによる場合が多く、内臓疾患が原因で生じる場合は稀です。治療はかゆみ止め(抗アレルギー剤)を中心に、発疹が出ない状態をつくることが大切です。日常生活の注意点としましては、衣類が擦れないようにすること、熱いお風呂は避けること、体が温まる食べ物を取りすぎないことなどがあります。治療経過が長期に及ぶ場合もありますが、必ず治りますので根気よく治療しましょう。
虫刺され
虫刺されによる症状は、虫の種類によってもさまざまです。特徴的な刺し口や皮膚の形状から関わった虫が明らかになる場合もありますが、残念ながら実際はそうでないことの方が多いです。虫刺されによるかゆみは、虫が皮膚に注入した唾液腺物質、有毒物質などに対するアレルギー反応もしくは刺激によるものですので、患者さんの体質や刺された回数によっても症状が変化します。刺されたあとをかき破ってしまうとバイ菌が入って化膿したり、硬いしこりが残ったりします。治療はステロイド外用薬、かゆみ止め(抗アレルギー剤)を用いて行いますが、ハチに繰り返し刺された場合は稀に全身にじんましんが出たり、声がかすれたり、息が苦しくなったりする場合もあります。そのような症状が出現したときは直ちに救急対応が可能な医療機関を受診してください。
とびひ
細菌が掻き傷に付着してキズ口が水ぶくれやかさぶたで覆われるようになります。水ぶくれの皮は薄いので、簡単に破れて細菌を含んだ内容液が周囲の皮膚に付着し周辺に飛び火していきます。火事の飛び火のようにあっと言う間に広がることから、例えでとびひと言われるようになりました。虫刺されやアトピー性皮膚炎、あせもなどの掻き傷が原因となりますので、日頃からのスキンケアが重要になります。特に夏場は細菌も増えやすいので、お風呂では患部は石けんをしっかりと泡立てやさしく洗った後はシャワー浴がいいと思います。治療は化膿止めの飲み薬、塗り薬などを使用します。
水イボ
伝染性軟属腫ウィルスの接触により感染します。プールのビート板などを介して感染することが多いとされています。大きさは数ミリくらいまでで白ニキビみたいに見えますが、潰すと中からウィルスを含むオカラのような白い物が出てきます。水イボの周囲がかゆくなってしまう場合もありますので、誤って掻きやぶると水イボが周囲に広がってしまいます。また全身の皮膚が乾燥していたり、皮膚炎を起こしている状態ですと容易に全身に広がってしまいます。1ミリ以下の小型の水イボの場合は経過観察で治癒することが多いですが、それ以上の大きさになると治療が必要になります。治療方法は受診の1時間前に痛み止めのテープを貼ってきていただき、小さなピンセットを用いて1つずつ水イボを除去していきます。当日からシャワー浴は可能ですが、止血していない場合はキズ薬を使用していただく場合もあります。
ウィルス性のイボ
一般的に皮膚から飛び出しているできものをまとめてイボと呼びますが、ここではヒト乳頭腫ウィルスの接触により感染した皮膚、粘膜にできるものをさします。正常な皮膚や粘膜では問題ありませんが、小さな傷などを介して感染するため、外力が加わりやすい手のひら、足の裏、指先などに好発します。さらに体が乾燥していたり荒れていたりすると、その部位にも広がっていくことがあります。治療は少し痛みを伴いますが液体窒素で凍らせて治療します。その他に数日ごとに貼り薬を使用したり、漢方薬を併用したりします。ヒト乳頭腫ウィルスは皮膚の深いところに感染するため、通常は一回の治療でよくなることはありません。兄弟間でうつしあったりする場合もありますので1~2週ごとに根気よく治療を継続することが大切です。
あせも
汗が原因で小さな水ぶくれができたり、赤いブツブツができたりします。かゆみを伴う場合もあります。体温調節がうまくできない小さなお子さんや多汗症の方によくみられます。シワができやすい首や肘、膝裏は汗も乾きにくいですので、症状は繰り返しやすくなりますし、かゆみを伴う場合はとびひの原因となります。かゆみが強い場合はステロイド外用薬を用いて治療します。室温を調整する、汗をこまめにふく、シャワーの回数をふやすことなどで予防することもできます。
おむつかぶれ
便や尿の刺激により皮膚炎を生じます。下痢の時や、おむつが湿った状態を長時間放置するとおむつかぶれになりやすいです。また日頃からの予防も大切で、おしり拭きシートは香料がなく、アルコールが含まれないものをご使用いただき、こすらず、おさえ拭きをすると効果的です。便などの付着があれば、ぬるま湯で軽く流してあげると皮膚の負担も減ります。また下痢の時は、ワセリンなどで皮膚の保護をしてあげると治りも早くなります。便の中にはカンジダ菌が潜んでいますので、必要であれば皮膚の一部を採取し顕微鏡で検査を行います。赤みが強い場合はステロイド外用薬を使用することもあります。
乳児脂漏性皮膚炎
生後2週間が経過した頃から頭部や眉毛部に黄色調のカサカサが出てくる皮膚病です。これらの皮疹はすべての赤ちゃんでみられる症状ですので心配しなくても大丈夫です。ほとんどの赤ちゃんは1歳になる頃にはスキンケアのみで自然に良くなります。原因は脂腺の機能が高まり皮脂の分泌が増えることによります。治療は特に必要なく、お風呂では低刺激性のベビーソープの泡で黄色調のカサカサをやさしくうかせながら洗うと効果的です。入浴後は乾燥しやすいですので頭部や眉毛部にも漏れなく保湿してください。
ニキビ
ニキビの原因は、ホルモンによる皮脂の過剰な分泌と毛穴のつまりです。毛穴に皮脂がたまると白ニキビになり、皮脂を栄養源にしてアクネ菌が増えると炎症を起こし白ニキビが赤ニキビに変化します。赤ニキビを放置しておくと皮膚へのダメージが蓄積するので、ニキビ痕として残る可能性があります。治療の目標は可能な限り白ニキビをできないようにしつつ、赤ニキビになってしまった場合でもすみやかに炎症をおさえる必要があります。女性の方の場合はメイク落とし、洗顔料、保湿剤、UVケアなどが原因で毛穴がつまりやすくなり、白ニキビができやすくなることが知られています。そのため化粧品による毛穴のつまりを極力抑えたノンコメドジェニックテストをクリアした商品の使用をおすすめします。またニキビを悪化させる因子としてホルモンバランスの乱れ、睡眠不足、ストレス、食生活の乱れ、皮膚の乾燥などもあります。治療はニキビのタイプ、重症度から外用薬、内服薬(化膿止め・漢方薬・ビタミン剤)を選択します。ニキビ痕を残さないためにも、なるべく早期から適切な治療を開始することが望ましいです。
アタマジラミ
シラミが人にすみつき、吸血することでアレルギー反応を生じかゆみをきたす感染症です。人に住み着いたシラミは毛に虫卵を産みつけます。その後、約1週間で虫卵がかえり、1ヶ月程度経過すると成虫となり虫卵を産むようになります。学童間で流行することも多いですので、児童で頭皮のかゆみが持続する場合は注意が必要です。診断は虫体や虫卵を肉眼で確認します。治療はくしを用いて虫卵を除去し、フェノトリンシャンプーを3日に1度、計4回使用します。家族内でも発生する可能性がありますので、疑わしい方は受診していただき、家族そろって治療を開始することをおすすめします。
手足口病
手足や口の中に水ぶくれや赤い斑点ができるウィルスによる感染症です。主に夏に流行し、乳幼児が集団生活している保育園や幼稚園で集団感染することがあります。感染してから3~5日後に皮膚、粘膜の症状が出現します。また3割くらいの方で発熱がみられ、ほとんどの方は数日で解熱しますが、稀に高熱が続いたり頭痛が出たりします。感染経路は咳やくしゃみなどの水滴が体に入る場合と、ウィルスが付着した手で目をこすったり食事をしたりすることによります。症状が治った後も、約1ケ月間は便中にウィルスが排出されるため、トイレの後はしっかりと手を洗ってください。